□第7番観音札所《摩尼珠院》(柏崎市)第8番札所から徒歩50分
“憤懣やるかたない”と思ってみたものの、当初の計画では8番札所から7番札所までの約4kmは歩くつもりだったわけだから…と冷静を装いつつ、ひたすら雪でぬかるむ歩道を進み、10時30分着。
ここ摩尼珠院も住職不在により地元管理になっていて、「最近、賽銭泥棒があって、現在は施錠している」とのことでガラス戸越しに読経する。
その後、妻から電話あり。
悪天候の中での強行による“安否確認”かと思いきや、まったくの別用件。
やれやれ。
午前中の予定を終え、再び歩いて柏崎駅まで約4kmの道のりを目指す。
*途中、キウイフルーツの木から一斉に飛び立つスズメの群れ!
海に向かっているせいか風が真正面から吹いてくる。
最後は自棄気味に傘も差さずに歩く。
まったく俺はなにをやってんだろう…と、ふと思う。
その思いも柏崎駅前の“大ちゃん食堂”の豚骨ラーメンとギョーザで一瞬のうちに霧散霧消!
さて、午後はなにが待っている?!
□第3番観音札所《大泉寺》(柏崎市)信越本線米山駅から徒歩60分
柏崎駅からいったん直江津方面に4駅戻り、13時10分米山駅下車。
今回の巡礼は、第25番札所真城院(新潟市)の倉茂良海氏編の「越後巡礼~33観音札所~」を基に計画を立て、あらかじめ各札所へは参拝予定の連絡にあわせて道順の照会、そしてバス会社へも路線や発着時間の照会などを行いながら進めている。
大泉寺については「冬期は不在となることもあり、注意」とあったため、春になってからにしょうかとも思いながら電話したところ、「不在ではあるが、参拝は可能」であり、「徒歩でも大丈夫」とのことで今回のコースに含めたのであったが…。
米山駅のすぐ裏の日本海からすさまじい向かい風。
再びくじけそうになる思いを風で吹き飛ばさせながら、大型トラックがしぶきを上げて行き交う国道8号線を歩いていくと、道端に旧参道の道標と石仏。
無事の参拝を祈って再び国道を歩き始め、「重要文化財・大清水観音堂」の大きな看板から左折し、上り道に入る。
“人”の足跡はなく車の轍もうっすらあるだけで、ただ雪一面の登り坂を意地になって歩く。
そのころからすでに妙に得体のしれない恐怖心がうごめき始めていたが、ここまで来て引き返せるかと思い、さらに進む。
坂を10分登ったところに車と徒歩の分かれ道。
車は残り1.5Kmもあるが、先には広い道が伸びている。
徒歩はあと500mだが、これはもう登山といった感じの山道が森の中に消えていく。
雪は降り続く。
周りに人影はない。
「登るか?帰るか?」
最後の選択!?
今、思うとこんな状況の中、どうして無謀にも登り始めたのか、よくわからない。
ひとつ間違えば熊との遭遇?
それとも雪道から落下?
観音様に導かれて…それはない。
やっぱり意地かな…、でもなんに対する意地だったんだろう?
「今日はやめておけ!」と8番札所で言われたことへの反発か?
それとも自分へノルマとしてだったのか?
ともあれ、泣きたくなるような心細さで登ること10分。
ようやく木々の間に観音堂が見えたときの安堵感。
無人のため、滴り落ちる汗を拭く暇も惜しんで読経し、ご朱印をいただく。
帰りは一気の坂道。
国道に出るまでは恐怖心から逃れるようにほぼ駆け足。
こんなところで日ごろのランの成果が生かせるとは…。
14時30分、無事に米山駅着。
往きは60分、帰りは30分。
この時間差が全てを物語っている。
□第4番観音札所《妙智寺》(柏崎市)鯨波駅から徒歩10分
米山駅は無人駅で待合室には暖房がないが、それでも、待ち時間に汗を吸い込んだタオルを替えたり、雪風をしのげるだけでもありがたい。
家を出てから約9時間。
この間、4時間弱の徒歩と寒さで疲れも感じていたが、予定どおり最後の参拝先に向かう。
15時10分、鯨波駅着。
風は少し弱くなったようだが、その分、雪が強くなっている。
山門をくぐって本堂に向かう。
今日、初めて本堂の中で心静かに読経ができた。
帰りに「雪の中、ご苦労さんですね」と、なぜかチーズを2ヶいただく。
ここの地(駅)名のとおり、“鯨”と青い“波”が描かれている駅舎で持ってきたどら焼きを頬張り、そして、冷めたお茶を飲む。
とにかく終わった。
***********************************
大変長くなってしまいましたが、こうして、とにもかくにも無事に第2回参拝を終えることができました。
本当に“無事に”という言葉をこんなに強く感じたことは最近にはないことです。
これは決して大袈裟ではなく大泉寺の山道を登りながら一瞬とはいえ“死”ということが脳裏をよぎりました。
それほど正直、怖かったです。
でも、これを裏返して「まだ死にたくない」というふうに考えれば、もっとしっかり生きなきゃ…ということなんでしょうね。